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 最近、医薬分業に対する批判的な意見が医療界のみならずマスコミにも報道されるようになっています。このままでは次回調剤報酬改定への影響が懸念されます。
 批判内容には大別して2つの流れがあります。ひとつは増え続ける薬局調剤医療費が医療費全体を押し上げているとの批判。2点目は薬局の対応、すなわち院内投薬を院外に移しただけという分業のメリットが見えないことに対する批判です。
 1月31日の朝日新聞13面のコラム「経済気象台」では「調剤薬局栄えて、医療保険制度崩壊す」という趣旨で調剤薬局医療費への批判が掲載されました。
 分業率が上昇した結果、薬局調剤医療費が上昇し、医療費高騰の原因になっているとの論旨は、他にも見られる分業批判と同様です。
 しかし、薬局調剤医療費は院内投薬分が院外に置き換わった薬剤費が大部分であり、仮にこれがすべて院内投薬であったとすれば、医科の医療費に跳ね返ることになります。薬局調剤医療費の内訳は2010年度で73.3%が薬剤費です。薬剤費は薬物治療の高度化、長期処方の導入などによって増加しています。
これらの要因を無視して、医療費高騰の原因があたかも薬局調剤医療費にあるかのような論旨を受け入れることはできません。

〇分業のメリットが見えにくい
 「2010年度の調剤医療費は約6兆円。そのうち技術料が約1兆5000億円を占めている。それだけの医療費のシェアを持つ以上、それに伴う保険薬局の責任も増してくることを認識して頂きたい。今以上に保険料や税の形で国民に負担を頂くためには制度自らが効率化の努力を行う必要があることを自覚して頂きたい」―。2011年10月、厚生労働省の社会保障担当参事官室長・武田俊彦氏(当時)が日本薬局学会総会の特別講演で語った内容です。武田氏の発言は、「社会保障・税の一体改革」を推進する厚労省の立場から、公的資金で賄われている医薬分業とそれを担う薬局・薬剤師の在り方を根本から問い直したものと受け止められます。

 この他にも、他の厚生官僚から「調剤業務に特化している薬局が流れ作業的に調剤をこなすだけでは物足りない。利用者は自分の健康状態が改善できることを期待して薬局に足を運んでいる。そのことに対して、最適な答えを提示できていると言えるのか」「本来の機能を果たしていないような薬局が目立つ。もう少し、薬局のあるべき姿を見つめ直すべき。本当に患者さんのため、地道に頑張っている薬局を評価するような調剤報酬の在り方があっていい」―等々の意見が公の場で述べられています。

 これらの意見は、医薬分業そのものを批判しているのではなく、分業によって薬剤師が関与することのメリットが見えて来ないことを指摘したものと受け止めることができます。
 今日、薬剤師の調剤業務の概念が大きく広がってきました。単に処方せん通り調剤するのではなく、薬歴、お薬手帳、インタビュー等を通じて体質やアレルギー歴、服薬実態、OTC医薬品やサプリメントも含めた服用実態を把握し、処方内容に照らし合わせて適切かどうかを判断するものです。
 分業に対して懐疑的な意見を持つ関係者は少なくありません。他の医療者との緊密な連携のもと、ひとり一人の患者に対して本来業務を遂行することはもちろん、安全性・有効性確保、医療の効率化のための取り組みを知らしめる必要があります。そのためには対人業務、対物業務の「見える化」を図ることが重要です。調剤業務に限らず、あらゆる薬局業務を「見える化」することでセルフメディケーションや日常健康管理にも貢献する薬局の姿が見えてくるでしょう。

(次世代薬局研究会2025代表・藤田道男)

東日本大震災でその効用が再確認されたお薬手帳―。手書きの処方せんをもとにお薬手帳に記載することで、ボランティアの薬剤師が前回処方を確認して投薬した例などが報告され、改めてその効用が認識されました。

〇携帯電話やPCから服薬情報を閲覧
 さて、紙ベースのお薬手帳から電子お薬手帳への移行の動きが始まっています。政府のIT戦略本部の「どこでもMY病院構想」では、個人が自らの医療・健康情報を医療機関や薬局から受け取り、それを自らが電子的に管理・活用することを目的に実証実験が行われています。
 具体的には、医療機関等から2次元バーコード、ICカード搭載携帯電話、ICカード、オンラインを経由して提供された自己の医療・健康情報を電子的に蓄積・管理し、タブレッに蓄積・管理し、タブレット型携帯端末やパソコン等で閲覧が可能になるものです。要するに医療・健康情報を医療関係者、患者が共有し、医療の効率化・合理化を図ると同時に、患者が主体的に健康・医療情報を把握することで治療に関する協働意識が高まることが期待されます。
 そのさきがけとして政府が2013年度からの導入をめざす「電子版お薬手帳」について石川県では薬局が参加してパイロット事業が行われています。また、大阪府では2011年11月に厚生労働省に提出した「地域医療再生計画『三次医療圏』」案の中に、薬務対策事業として携帯電話を活用した服薬情報管理システムの構築を盛り込みました。2013年にも稼働させる予定です。

〇携帯性に優れ、薬局・患者間で情報共有
 医療機関・薬局等と患者との情報の受け渡し方法は、2つのタイプに分けられます。1つは、お薬手帳のシールを渡すように、電子データそのものを患者に渡すというもので、レセコンに入力されている情報の一部をQRコードに変換し、それを患者の携帯電話のカメラ機能で読み込んでもらうという仕組みです。もう1つは、薬局がレセプトコンピュータから別のサーバーに情報をコピーしておき、患者が携帯電話やパソコンなどを使ってそのサーバーにアクセスするものです。この方式では、情報が一元的に管理でき、ネットワーク上で薬局と患者がつながる点で、情報活用の幅が広がります。
 電子お薬手帳のメリットは何と言っても携帯性に優れていることです。紙ベースでは手帳どうしても忘れてしまうことがありますが、携帯電話やスマートフォンは財布を持ち歩くのと同様に、現代人の必需品になっています。また情報量が圧倒的に多いこと、患者との双方向のコミュニケーションが可能になることなどかかりつけ薬局としてのメリットも享受できます。
 民間レベルでも独自に開発・試行している薬局が次々に現れ始めました。都内での薬局が導入しているのは、次世代クラウド健康サービス。同社のサーバーにアクセスし情報を閲覧する仕組みです。特徴はレセコンと連動していること。レセコンで管理されている服薬情報をクラウド上でセキュアに管理することにより、提携している薬局間での患者情報が共有できるほか、患者も携帯電話やスマートフォン、パソコンから薬歴の閲覧や服薬や健康支援情報を無料で受け取ることができます。
 具体的には調剤日、医療機関名、医師名、薬剤名、用法・用量などのお薬手帳機能のほか、家族管理、飲み忘れ防止機能、メモ機能などが整備されています。薬剤名をクリックすれば使用上の注意、作用・効果、副作用、保管方法など詳細な情報も引き出せます。
 双方向であり、服薬指導の際に言い忘れたことを伝えたり、患者が薬局で相談できなかったこと、聞きづらかったことなどをメールで問い合わせすることもできます。
 現在のところ、電子お薬手帳は様々なタイプがあり、それぞれに互換性があるわけではありません。しかし、政府は紙に変わる電子お薬手帳の普及を図るため、共通のソフトを開発する意向です。また現状では調剤報酬上で電子お薬手帳を想定していないため電子お薬手帳のみでは算定できませんが、この点についても次回改定までには措置することになるでしょう。

(次世代薬局研究会2025・代表 藤田道男)

〇14大手健保組合と全国約600件の薬局が合意
 保険者による調剤レセプトの直接審査・支払が急速に進んでいる。直接審査・支払を実施する健保組合は2011年7月現在で、日本アイ・ビー・エム、日本電気、トヨタ自動車、トヨタ販売、日産自動車、三菱電機、東芝など14組合となっている(表)。一方、健保組合と同意する薬局も、日本調剤、スギ薬局など調剤専門チェーン薬局を中心に全国で571軒に達している。
 直接審査・支払は、支払基金・国保連合会の審査支払機関を通さず、薬局が直接健保組合にレセプト請求し、審査を受けて支払を受ける仕組み(図)。健保組合は審査支払機関の審査代行手数料が効率化でき、薬局は調剤レセプトの支払の前倒しになるというメリットがある。すでに健保組合に対して2005年3月の厚労省保険局長通知(注1)によって、特定の薬局と合意した場合には、健康保険組合は直接審査・支払を行うことができることになった。ただし、これには「事前同意を得た医療機関が発行する処方せん」に限ることなどいくつかの要件があって、薬局側の参画の障壁になっていた。
 しかし、2007年1月の保険局長通知(注2)で医療機関の同意要件が撤廃されたほか、健保組合が医科レセプトと調剤レセプトを突合点検した結果、内容に疑義が生じた場合には、1)支払基金に対し審査に関する意見を依頼する、2)支払基金は審査委員会で審査し、健保組合に意見を提出する、3)医療機関の減額査定を行う際には健保組合が査定分の合意を得て処理をする、などの処理ルールをつくった。

〇突合点検による減額査定の処理はうまくいくのか
 これらの結果、調剤レセプトの直接審査・支払の動きに拍車がかかることになった。2008年10月のトヨタ自動車および日本電気の健保組合を皮切りに、参加する健保組合は増え、最近ではデンソーや中国電力が加わって14組合になっている。今後も参加する健保組合がさらに増えることが予想され、それに対応して合意・契約する薬局も増加する模様だ。たとえば、中国電力など地域性の高い健保組合が参加すると、地元で合意する薬局が一挙に増えるといった動きをみせている。
 これまでの合意薬局は必ずしも調剤専門チェーンに限定しているわけではない。減額査定の場合には、支払基金が間に入るにせよ、医療機関とトラブルが発生し、処理が必ずしもスムーズに行くとは限らない。また、参加するとなると、相手が健保組合なので後発品への対応力など一定レベルも問われそう。なお、医療機関と健保組合の直接審査・支払にゴーサインが出たのは薬局よりも早い2002年12月の保険局長通知(注3)であった。しかし、全国で名乗りを挙げる医療機関はないようだ。
注1:「健康保険組合における調剤報酬の審査及び支払に関する事務の取扱いについて」(平成17年3月30日 保発第0330005号)、注2:「健康保険組合における調剤報酬の審査及び支払に関する事務の取扱いについて」(平成19年1月10日 保発第0110001号)、注3:「健康保険組合における診療報酬の審査及び支払に関する事務の取扱いについて」(平成14年12月25日 保発1225001号)

〇直接審査・支払に参加する健保組合(2011年7月1日現在)
 ・アイシン健保組合、コニカミノルタ健保組合、小松製作所健保組合、中国電力健保組合、デンソー健保組合、東芝健保組合、トヨタ自動車健保組合、トヨタ販売連合健保組合、日産自動車健保組合、日本アイ・ビー・エム健保組合、日本電気健保組合、日本ユニシス健保組合、三菱電機健保組合、リコー三愛グループ健保組合