2025活動報告・上田地区訪問レポート

■上田地区訪問レポート
一般社団法人 次世代薬局研究会2025 副代表理事 宮本光雄

 2018年9月末、上田薬剤師会(飯島康典会長)への視察を敢行した。これからの薬剤師・薬局の意識改革や行動変容のあり方を考える上で示唆に富んだ話をいただいたイイジマ薬局(飯島裕也代表取締役社長)における薬局サービスの運営と展開にスポットをあてて紹介したい。

1日処方箋数130~140枚、集中率9%の面対応
 イイジマ薬局はいわゆる面対応型の薬局であり、上田市の生活圏の中に立地している。2017年には開局40周年を迎え、今年は41年目に入った。1カ月の処方箋応需は平均3,400枚で、1日平均130枚~140枚。受付医療機関数は1カ月平均170施設で、医療機関当たりの処方箋集中率は最大のときでも9%と低い。備蓄品目数は、医療用医薬品と一般用医薬品、その他医療材料・雑貨を含めて約3,000品目弱に達する。「経営面からすると在庫がデッドになることもあるが、面対応なのでこのくらいの品目数を持たないと対応できない」と飯島氏は語る(以下、文中のコメントはすべて飯島氏)。
 店舗の営業日は、休日が1月1日の元日のみで日曜・祝日も開店するから、364日ということになる。しかし、上田薬剤師会の夜間輪番制で毎月1日が当番日にあたっているので、元日も午後7時から24時間対応をする。また、営業時間は平日が朝7時30分から夜9時まで。日曜・祝日が朝9時から夜7時30分までだが、その後の夜間対応も行っている。
 新患患者数が毎月170人増と際立って多いのは休日・夜間対応によるもので、休日・夜間はほぼ新患で占められるという。店舗は午後9時までの営業だが、その後の夜間対応には、上田市の内科・小児科初期救急センター(午後11時まで処方箋発行)の対応も含まれている。

薬剤師10人体制で薬局業務のすべてをカバー
 イイジマ薬局で最も注目されるのは営業体制だ。薬剤師10人(パートを含む)で薬局全体の業務のほぼすべてをカバーしているといっても過言ではない。処方箋応需はもちろん、さまざまな相談業務、在宅業務のほか、レセコン入力などの請求業務に至るまでを薬剤師が担当する。「人件費を考えるとしんどい部分も確かにありますが、対応するのが全員薬剤師という点が患者さんにとって話しやすかったり、いつ薬局に来ても相談にのってくれるという安心感につながっています」という。
 例えば、時間的にメリハリのある対応ができる。「薬剤師にはカウンセリング能力が問われており、本当にその薬が患者さんにとって適切かどうかを判断するには1時間、2時間をかけて見極める場合もあります」と語る。薬剤師10人で臨めば、1人の薬剤師が長時間話し込んでいても他の薬剤師が対応できる。
 また、門前薬局では患者を待たせるのが当たり前とばかりに、広い待合室を確保しているが、生活圏の中にある面対応型の薬局が同じではいけない。待たせない姿勢を見せるために、今年から店舗内に設置している待合席を10脚から7脚に減らすと同時に、投薬カウンターを3つ増やした。1日平均130人~140人の患者が来局するのに待合席はたった7脚である。
「できるだけ回転率を高めて待たせないようにしている。待合席が多いと、いくら薬剤師を厚く配置していても待つイメージが定着してしまう。それを避けたい」と語る。そのために慢性期の患者で薬を急がない場合は、整理券を渡すなどして時間をずらせて来局してもらう場合もあるという。ここに患者対応の質で勝負するという意気込みがうかがえる。

入店前から患者の様子を察知する
 とはいえ、患者1人ひとりの応対は、患者側の事情によって左右されるので、一律なものではない。「私たちは、来局する患者さんの顔と名前ばかりか、自家用車のナンバーまでわかっています。何のために来て、どんな顔つきや足取りで店に入ってくるか、また、急いでいるのか、余裕がありそうなのかもわかる」。そのため、例えば処方箋受付時に「どうしたの? 今日は調子悪そうじゃない」とひと声かけておき、薬を渡すときに話の続きをするとか、来局理由を予測してその話から入るとか、容態の話から始めるなど、観察力や察知力を働かせた臨機応変な対応が大切になる。「患者さんは薬の飲み方などは、説明をしなくても見ればわかること。その患者さんにとって最も良い情報であれば聞いてくれる」と指摘する。薬剤師としてというよりも、患者への思いやり(関心度の高さ)や顧客サービスの発想が求められているといえようか。
 逆に、患者にも薬局の状況を察知してもらう。調剤室を全面ガラス張りにし、薬剤師の仕事ぶりがすべて患者に見えるようにしている。業務が多忙なのか、そうでないのかが患者にもわかる。飯島氏の見解は、同じ10分待たされるにしても閉鎖的(何の情報もなし)に待たされるのと、知らされて待たされるのでは大きな違いがあるということだ。

地域のファーストアクセスのポジションはどこから?
 現在の薬局の基本パターンは、処方箋を受けたら、正確・迅速に薬を調製し患者に渡すこと。イイジマ薬局では、「患者さんは喋りたい。後ろで待っている人も気にせず、話しだす。私たちは、患者さんが長く待ってもいいから話をしたいと思ってもらえるような服薬指導をするかにかかっている」と語る。いったい何が違うのだろうか――。
 イイジマ薬局の処方箋なしの来局者は全体の20%。しかも、OTCを買う場合にも何を買うかを決めている人は少ないという。今抱えている症状について薬局に行って相談したいという気持ちが優先している。あるいは「他の店で薬を購入したけれども、あなたの意見が聞きたい」といった電話相談は相当な数にのぼっている。言い換えれば、薬局をファーストアクセス先として認知しているということだ。まず薬局に行って薬剤師の意見を聞いてみようという土壌が存在しているところが違う。
 その要因の1つは、「上田小県地区では昭和40年から、小・中・高校生を対象にしたお薬教室を行ってきました。薬とか、口に入れるものに関する相談があれば、いつでも薬局に相談してほしい」と、子どもの頃から薬局の存在について意識づけをしてきたことを挙げる。
 もう1つは、患者に対する情報提供、服薬指導の質・量の違いであろう。例えば、怪我をして整形外科で処置をしてもらい、処方箋を持参した薬局で鎮痛薬と抗生剤をもらう。一般的にはそのパターンで終わりだが、「私たちは差別化するために、傷口の貼り替え用のテープ材まで用意する。服薬指導では、ある病気になる原因や予防法、病後のアフターケアまで説明します。頭のてっぺんから爪先に至るまで、健康や病気に関わることは、医療材料に至るまで薬剤師が説明し、物品もアレンジしておく」という。薬の説明に終わらず、その周辺まで網羅した話をする。個別対応の徹底ぶりを垣間見る思いだ。そうした現場での積み重ねが、ファーストアクセスを薬局にするという地域の評価を生む要因になっているといえよう。

来やすさにつながる健康サポート機能
 また、店舗内に健康サポートのコーナーがあることも、薬局に来やすい状況を生む要因になっている。HbA1cやコレステロール値、体脂肪率、身長・体重、握力、骨量、筋肉量、基礎代謝量などのセルフチェックが行える機器を揃えている。薬剤師が本人の生活習慣病に関わる測定値を見て、薬の種類数を減らしたり、用量を減量したりする判断の目安にするのが目的だが、地域の高齢者等のフレイル予防のチェックをしてもらう意味もあり、基本的には自由に来局して測定できることにしている。なかには薬局の前をとおりかかったついでに測定するという人もいる。測定のみで来る人は1日当たりにすると1~2人くらいと多くはない。ただ、測定の対応にも時間がかかるので、患者も土曜の午後とか日曜に来局することが多いとのことだ。

在宅でやるべき仕事ができたら、もっと評価してほしい
 在宅業務は昼間・夜間を問わず常時の対応であり、患者個々の事情に合わせた訪問ができるのは、薬剤師10人体制の強みだ。薬剤師10人のうち3人が約100人の在宅患者を担当しており、外来の業務に支障はない。在宅では、「薬を届けるだけでは評価されません。大切なのは、薬剤師が介入してバイタルサインを計測し、患者の状況等を見て、処方整理をする。場合によって処方医と掛け合って処方提案をする。その労力があってこその評価です」と強調する。イイジマ薬局では、かかりつけ薬剤師指導料を算定する来局患者は1%に満たない。「いままでかかりつけとして取り組んできているので今更取れません。指導料を取っている人は24時間対応で、取らない人はやらないわけではない」と事情を話す。
 ただ、在宅患者の場合は、在宅への配送料と、薬剤師が在宅でやるべき仕事をした場合は、かかりつけ薬剤師指導料をもらうようにしているという。

患者から聞き、一緒になって調べ、専門家と連携
 薬剤師にはどんな知識が求められるのかについて飯島氏は、次のように語る。
「薬学的な知識修得はもう当たり前です。あとは、患者さんのことをどれだけ思いやれるかと気づきが大切。ただ、患者さんの生まれ育った環境とか性格・趣向に大きく左右されるので気づきの教育が難しい。眼の前にいる患者さんのために、ひたすら勉強でしょう」。
 何を勉強するかについては、「ある病気になる原因をはじめ、手術をするのであれば、どんな手術をするのかや、リスクについても説明が必要です。そうした説明は病院でもするかもしれないが、薬剤師の立場でも説明できるようにする」と語る。また、腰痛や関節痛の人に運動を勧めることは誰でもできるが、どんな運動をすればいいのかまで情報提供ができるように、踏み込んだ勉強をする必要があると指摘する。
 さらに、わからないことや専門外のことは専門家に直接聞くなどして連携するほか、現場では最初に話をする患者から教えてもらったり、一緒に調べたりする局面を持つことも大切という。即座に答えられないときは、「今度来るときまでに調べておきます。いつ来られますか? などと対応すると、患者さんが薬局に来やすい環境づくりにもなります」と語る。まさに患者に寄り添いながら、患者が抱える問題や悩みをサポートできるかにかかっているといえよう。
 上田薬剤師会の見学は、「モノ」の販売から「健康(病気回復)」への販売という基本的な課題に取り組むには、薬剤師は何をしなければならないかを考える上で、大事なヒントを獲得する機会となった。
 イイジマ薬局の玄関右側には、店舗に在職するすべての薬剤師の名前が張り出されている。この薬局が薬剤師のさまざまな活動で成り立っていることを地域に示すシンボルのように思われた。

〔ワンポイント解説〕
 イイジマ薬局にスポットを当て薬局の取り組みを紹介しましたが、これは同薬局だけに特筆されるものではありません。かかりつけ薬局として患者への思いやりや気付きを大切にし、周到な服薬指導・情報提供を行うこと、また、患者・地域生活者のファーストチョイスに応えるさまざまな相談に全力で応じる姿勢は、上田薬剤師会のすべての薬局・薬剤師が実践していることです。
 その取り組みの根底には育まれた「土壌」があります。それは1年、2年の短期的な努力の成果ではなく、上田薬剤師会が取り組んできた面分業主導の歴史から培われたものです。社会や地域の変化に対応して「地域住民の健康な生活の確保」を目指して薬剤師が研鑽・努力し、薬剤師会は学術研修活動や薬剤師の日常業務の支援のための地域医療活動、地域に薬局・薬剤師の存在価値を認めてもらうための地域社会活動など、組織で会員薬局をバックアップする仕組みをつくりあげてきたといえます。