2019年 1月

手を携え、薬局・薬剤師の展望を拓こう―若手薬剤師諸君への呼びかけ
一般社団法人 次世代薬局研究会2025代表・藤田道男

医薬品医療機器等法(薬機法)改正の議論を続けていた厚生労働省・厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会の議論が昨年末に終了、同部会の報告書をもとに薬機法改正案が次期通常国会に提出される運びとなっています。
薬機法改正の方向については、各媒体を通じて報道されており、本研究会でも折に触れて発信していますので、重複は避けますが、薬局機能・薬剤師業務のあり方を大きく左右することは間違いありません。
ただ、法律はあくまでも実態に照らした最低限の行為を規定するものであり、薬局・薬剤師の対応としては薬機法改正を出発点と捉え、あるべき薬局機能や薬剤師業務のあり方を深化させる必要があります。

若手薬剤師部会発足へ
このため、一般社団法人 次世代薬局研究会2025は、昨年から開催してきた若手薬剤師・薬学生によるグループ討論を踏まえ、「若手薬剤師部会」を設立することを理事会決定いたしました。2月10日に開催する第3回会合で正式に発表いたします。
過去2回の会合では、参加した若手薬剤師それぞれが抱いている現状認識や今後の展望について意見交換し、それを踏まえて薬局とは?薬剤師とは?の基本認識を深めました。3回目は薬局・薬剤師が拠って立つ基盤は何か?について社会保障制度、調剤、多職種連携、地域包括ケアシステム等について議論を深めます。
薬機法が改正されるとはいえ、調剤や医薬分業の概念の整備はなお不十分です。このため患者は薬局で調剤する意味を十分に理解しているとは言い難い状況にあります。かかりつけ薬剤師・薬局の推進についても利用者(患者)が薬剤師を選択できるような評価ポイントが不明確なまま進められています。同時に現場における対応にも反省すべき点があると言えるでしょう。
医療は「患者と医療者の協働作業」と言われますが、患者が評価できるような情報開示がなされているかどうか。確かに処方箋に基づく薬物療法に関して、患者側から理解しにくい側面はありますが、薬局・薬剤師は一層の情報開示と「見える化」によって薬剤師と患者との「協働」を共有する努力が必要です。
次世代薬局研究会2025が立ち上げる「若手薬剤師部会」はそうした問題を掘り下げ、薬局現場における行動指針として提言する方針です。(※若手薬剤師は年齢で区分しておりません。「自称?若手」も歓迎です)
年度内は4回シリーズで終了しますが、新年度も引き続き開催いたします。今回、参加できなかった方々もご期待ください。

経営者・管理者部会、管理栄養士部会も立ち上げへ
また若手薬剤師部会のほか、薬局経営者・管理者部会、薬学生部会、管理栄養士部会、薬学教員部会等も立ち上げ、健康サポート、多職種連携時代に対応する横断的人財育成に取り組むことにしています。それによって職種間、階層間の垣根を越えた一体感の醸成とモチベーション向上につながることが期待されます。そのことが地域生活者・患者から真に支持される存在に生まれ変わる第一歩と確信しております。
薬局・薬剤師のあり方が大きく変わろうとしている今日、薬局・薬剤師が地域において確固たる存在価値を示すことができるよう、手を携えてともに前進しようではありませんか。皆様のご参加をお待ちしております。

グレーゾーン解消制度における大前提とは何か?
一般社団法人 次世代薬局研究会2025 副代表理事 宮本光雄

調剤業務にも導入が進むグレーゾーン解消制度
産業競争力強化法に基づいて2014年から始められた、いわゆるグレーゾーン解消制度(通称)は、薬局に密接に関わる規制上の緩和策が打ち出されている。
グレーゾーン解消制度とは、新しいビジネスやサービスを検討している事業者が予め法的な規制に抵触していなかどうかを照会によって確認できる仕組みだ。経産省がすべての受付窓口を担当し、関係省庁に確認を行って、原則として1カ月以内に回答され、その内容が同省の『News Release』に掲載される。
薬局関連事業ではこれまでに、①「薬局店頭における唾液による口腔内環境チェックの実施に係る取扱い」(2015年8月回答)、②「薬局における待ち時間を短縮する薬剤の販売方法の導入に係る薬機法上の取り扱い」(2017年10月回答)、③「薬局における営業時間外の薬剤の受け渡しサービスの導入に係る薬機法上の取り扱い」(2018年4月回答)、④「処方薬の送達サービスにおける郵便法の取り扱い」(2018年8月回答)などがあり、規制上「抵触しない」の回答が出されている。この中で今回は、薬局の調剤業務に密接に関わる② と④ について取り上げてみたい。
②は薬局事業者からの照会。薬剤師が患者に薬剤の調製前に処方監査や確認すべき事項を確認し、服薬指導を行った後、調剤した薬剤の郵送等を行うサービスが、薬機法の「調剤された薬剤に対する情報提供及び指導等」(第9条の3第1項)に抵触するか否かを照会したもの。
関係省庁である厚労省の回答は、薬剤師が諸条件を確認注した上で、薬剤の調製を行う前に、薬局において薬剤師が対面で指導等を行う(つまり薬局が“先確認”と“先指導”を行うことが前提)のであれば、その後の薬剤の送達サービスは薬機法に抵触にしないとなった。経産省は、「これにより、薬局での薬剤の調製と服薬指導の順番等に係る、医薬品医療機器等法の規制適用範囲がより明確となり、薬局における患者の待ち時間短縮のための新たなビジネスモデルの確立が期待される」とコメントしている。
④ は、②の調剤した薬剤の送達サービスに関連するもの。薬剤の配送にあたって同封される薬剤情報提供書が「信書」にあたるかどうかと同時に、日本郵便株式会社以外の運送業者による配送が認められるかどうか(郵便法4条第2項、同第3項)の照会である。所管の総務省の回答は、「貨物に添付する無封の添え状又は送り状」(信書に該当しない)に該当し、貨物に添付して郵便・信書便以外の運送方法での送付が認められるとされた。「これにより、処方薬の送達サービスの導入が進み、治療中断による重篤化が減少することが期待される」と経産省はコメントしている。

改めて明確にされた先確認・先指導の大切さ
薬局の調剤業務に関わるグレーゾーン解消の動きをみてくると、新たな事業分野の振興の立場である経産省は、患者の利便性や薬局業務の機械化・効率化を考えた新たなビジネスモデルと評価している。確かに法規制の解釈は問題なしかもしれないが、調剤の現場では条件付きの運用になることに留意が必要であろう。
対面による先確認・先指導後の薬剤送達サービスは、患者が薬局で待つことなく翌日配送してもらえる、会計はウェブ決済できるとなれば、確かに利便性が向上になる場合はある。ただ、治療の緊急性があれば患者は処方箋持参時に薬剤の交付を要求するだろうし、当日配送ならまだしも、翌日配送では結局、薬の待ち時間は長くなる。むしろ薬剤送達サービスの恩恵が大きいのは、高齢の通院患者や在宅患者ではないか。すでに在宅領域で配送サービスを実施している薬局は少なくない。その場合でも送達コストは誰が負担するのかが問題となる。
経産省のニュースリリースでは、薬局での事業フロー図を例示しているが、この処方箋提出から薬剤交付(当日受取・翌日配送)までの流れを見ると、先確認や先指導という調剤の概念の本質的な部分が十分に踏まえられていないとしか思えないところがある(図参照)。あるいは患者の利便性だけを強調しようとした図ともいえようか。最も気になるのは、処方監査や患者との会話による先確認が明確に記載されていないことだ。また、送達サービスの仕組みは、「最寄り駅」の薬局となっていて、一面的ともいえる。
調剤業務の機械化・効率化は、これからの薬局・薬剤師が対人業務へ軸足を移していくための必須の課題の1つである。とはいえ先確認・先指導は、経産省のようにビジネスや患者の利便性だけに走りがちな時代の中で、調剤業務の大事な大原則である。そして、今後は当日受け取りにせよ、郵送・配送であっても、薬剤が渡った後の服用期間中のフォローアップをどうするかが大きな課題になっている。

注1:経産省の『News Release』(平成29年9月15日)では、薬剤の送達サービスについて次のような補足を掲載している。
「薬剤師が諸条件を確認」について、照会の事業では以下によって服薬指導や薬剤の郵送を行うにあたり、問題がないことを薬剤師が確認した場合に限り本サービスを行うこととしている点、補足いたします。
・薬剤師が処方せんを受け付けた際、服薬指導の前に、処方せんの内容を監査(患者の情報の確認及び過去の服用歴の確認等)し、疑義があれば医師に疑義照会する。
・患者に過去の服用歴があること、郵送するに当たり薬品の品質に問題がないこと等を踏まえ、薬剤の調製前に薬学的知見に基づいて指導を行い、その後薬剤の郵送を行うことについて、薬剤師が問題がないことを確認している。

一般社団法人次世代薬局研究会2025
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