2018年 4月

日時:2018年2月24日(土)
会場:連合会館

〔講演1〕
「2018年度調剤報酬改定の概要と対応策」
次世代薬局研究会2025 代表理事 藤田道男

「外枠」の狙いは大型門前薬局、地域支援体制の実績づくりへ
 藤田代表は、2018年度調剤報酬改定が前回と同様、「外枠」(「医科」1:「歯科」1:「調剤」0.3の配分枠外の引き下げ)という変則的な方法がとられ、実質的には約100億円(医療費ベース)のマイナス改定であったとし、このやり方が今後も常態化する可能性が高いと予想した。
「外枠」のターゲットは主に大型門前薬局であり、「厚労省は大型門前薬局に対する評価引き下げに相当な熱意を持って臨んだことがわかる」と指摘。調剤基本料のランク分けについて、現行の処方箋受付回数・集中率に加え、同一グループ薬局の処方箋や医療モールの全医療機関の処方箋の合算という厳格な縛りを導入したこと、同時に、かかりつけ薬剤師の実績が月100件以上であれば、調剤基本料1に復帰できるという「特例除外」の廃止の影響も大きく、「制度の抜け穴的な方法が抑え込まれることになった」と述べた。これによって、ほぼ9割を占めていた「調剤基本料1」の薬局の構図が大きく変化し、「2」や「3」へのランク下げとなる薬局は避けられそうにない。
 変更率85%以上の「加算3」が加えられ3区分となった後発医薬品調剤体制加算は、2020年の早い時期に80%以上(数量ベース)を目標に掲げる国の方針に沿った改定であり、この加算点数を失わないためにも、まず75%以上への底上げが課題とした。また、目標の達成後の急激な変更率低下を回避するための布石として、変更率2割以下の薬局の調剤基本料を2点引き下げが行われる。「この2割以下が5割以下に引き下げられる可能性もある」と予測した。
 基準調剤加算を廃止して新設された地域支援体制加算(35点)は、調剤基本料1、同2、同3のいずれの薬局でも算定可能だが、12項目の施設基準のうち、調剤基本料1以外の薬局に求められる「地域医療に貢献する体制を有することを示す相当の実績」(8項目/常勤薬剤師1人)のクリアが困難を伴うと指摘。特に麻薬指導管理加算および服用薬剤調整支援料(新設)の実績づくりは、「処方医との顔の見える連携関係の構築が必要になる」とした。
 一方、調剤基本料1の薬局には、麻薬小売業者の免許、在宅患者の実績、かかりつけ薬剤師指導料の届出の3項目であり、特に実績値を必要としていないので、地域支援体制加算は相対的に取得しやすいとした。基準調剤加算の届出は1万4000軒(全体の約3割)であるが、2018年度から調剤基本料1の薬局では地域支援体制加算の届出の増加を予測するとともに、調剤基本料2、3の薬局がどの程度の実績がつくれるかが注目されるとした。

薬歴記載に求められた“記録のための記録”の防止策
 薬学管理料では、薬剤服用歴管理指導料の点数が若干引き上げになるとともに、薬歴に次回の服薬指導計画が記載項目に加えられたこと、お薬手帳の活用が5割以下の場合、指導料が13点になるとともに重複投薬・相互作用等防止加算など4つの加算が取れなくなることが大きい(1年間の経過措置あり)。藤田代表は「お薬手帳の持参率の低い薬局は、患者への働きかけに力を注ぐ必要がある」とした。
 薬歴の記載事項は17項目だが、今次改定によって11項目に整理され、「薬学的管理に必要な患者の生活像」「手帳活用の有無」などが加えられた。“記録のための記録”を防止し、患者からの情報収集と薬剤師の判断に基づく記載を求めたもの。また、2014年改定で義務化された「先確認事項」は5項目となった。
 重複投薬・相互作用等防止加算は、「残薬」と「残薬以外」の2つの区分となり、前者では「残薬分を差し引いた減数調剤」の考え方が明確にされ、処方医が処方箋の備考欄に「残薬調整後の報告可」とあれば、薬剤師による減数調剤は事後報告でよいことになった。ただ、これは医療機関と薬局で予め合意した方法による取り扱いであることに留意が必要である。
 ちなみに藤田代表は、2016年の重複投薬・相互作用等防止加算の算定件数が約29万件(月間)とそれまでの約3倍に急増していることを評価。「薬局業務を評価する意味でも、あるいは医薬分業の必要性を証明する意味でも、この実績を上げておくことが極めて重要」と述べた。

重要性が高まる服薬期間中の薬剤師のフォローアップ
 かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料は、点数が引き上げられたこと、薬剤師の在籍期間が6か月以上から1年以上になったことなど。また、患者の同意書にはかかりつけを必要とする薬学的観点からの判断理由(薬剤師記入欄)や、かかりつけ薬剤師に対する希望(患者記入欄)などの記載が求められ、これまで以上に同意書の取り付けが厳密になった(これは、同一患者に対する複数薬局によるかかりつけ薬剤師指導料の算定という請求の現状も背景にある。ちなみに審査支払機関は2018年から複数薬局による請求は返戻される)。
新設された服用薬剤調整支援料(125点)は、6種類以上の内服薬が処方された患者について、薬剤師が提案して2種類以上(少なくとも1種類は薬剤師が提案したもの)減少し、その状態が4週間以上継続した場合に算定できる。重複投薬・相互作用防止等加算と異なり、薬剤師が患者の意向を尊重して薬学的観点から処方医に減薬を提案する点が特徴。
藤田代表は、「薬剤総合評価調整管理料を算定する医療機関と連携した場合」との解釈については、薬局が調整支援料の算定要件を満たす前に、医療機関が調整管理料を算定することができるため説明、ポリファーマシー対策としても薬局側から医療機関や患者に積極的に働きかけていくことが重要とした。
 医科の点数改定で分割調剤の仕組みが明確化された。分割する場合は3回までとされ、処方箋もそれに対応した様式に変更され、できる限り同一薬局で調剤を受けるべきなどとされた。運用の手続きが複雑であり、どこまで普及するかが注目されるところだが、藤田代表は「分割調剤もリフィル処方もあくまで医師の処方権に関わることであり、薬局・薬剤師からリフィルにすべきと発言するのは適切でない」と注意を促すとともに、「世論的にはリフィル処方は基本的に賛成の方向であり、厚労省もリフィル定着化のために打った布石」と位置付け、「服薬期間中における薬剤師対応がいかに重要性を帯びているかをよく考える必要がある」とし、リフィル処方につながる分割調剤の普及の鍵は薬剤師が握るとの見解を述べた。

地域のインフラとして存在意義を高められるか
 藤田代表は2018年度改定を概観して、調剤技術料のマイナス分は、「対物から対人へ」の流れの中で、薬学管理料に関わる業務に懸命に取り組んで補うしかないとした。また、財政の緊迫状況や人口減少の進展によって処方箋枚数の頭打ちが予想される中で、調剤報酬改定はマイナスの趨勢で動くととらえる必要があり、「調剤100%依存の経営のやり方を終焉させるとき」と訴えた。
 また、薬局は「医療提供施設」(医療法)であると同時に、民間の小売業でもあるという医療機関や介護施設などが真似のできないポジションにあり、その“強み”を最大限に活かして、保険外収益をいかに事業化できるかを重要課題として挙げた。もちろん、それは調剤からの離脱を意味していない。薬の交付後の患者のフォローアップなどこれまで手薄であった業務にきちんと対応していかなければ、「医薬分業そのものの存立さえ危うくなる」とした。
 そのほか、「分割(調剤)」にきちんと対応すればリフィル処方箋につながり、対人業務の充実を図ろうとすれば、調剤の自動化・効率化やテクニシャン制度、箱出し調剤の検討は避けられないテーマになるとしたほか、M&Aを考える薬局が増える可能性やドラッグストアの調剤事業の伸長など、薬局業界に到来している大きな環境変化に触れ、「地域におけるインフラとしての存在意義を高められるかどうかが重要になる」とし、現状維持のままでは済まない将来に向けた薬局・薬剤師の基本的な改革の方向性について展望した。

〔講演2〕
「薬局・薬剤師のパラダイムシフト~今後の方向性を探る~」
保険薬局経営者連合会会長(プライマリーファーマシー代表取締役社長)
山村真一氏

「薬局は本当に国民のためになっているのか」、国民の疑問符に応える
 山村氏は、調剤報酬改定で「外枠」を導入した目的は、大手門前薬局をターゲットにして逃げ場のない状況に追い込むこととし、その点、街の個店は大きな影響を受けずに済んだとはいえ、数量シェアが引き上げられた後発医薬品の基準はクリアしなければならないし、地域支援体制加算を確実に取っていく努力が必要であろうとした。
 しかし、点数改定のたびに振り回されている薬局業界に対し、「そんなことをやっていていいのか」と発言。国民は改定なんて関心の外であり、今こそ「本当に我々薬局は国民のためになっているのか」を問うべきときであり、「私たちは抱えている課題を共有し、そのためのアクションを起こさなければならないことを強くアピールしたい」と強調した。
 薬局・薬剤師に対する国民の疑問符は、2015年3月開催の「公開ディスカッション」に始まり、「平成29年度 秋のレビュー」(内閣府主催の行政事業レビュー)では調剤技術料が取り上げられ、「国民に対して当然やるべきことがやれていないところは減点すべき」「当然やるべきことは基本料に含まれ、その上に薬学管理料を上乗せするのは理解できない」「1年間に1.8兆円もの技術料が公費で支払われているが、それはサービス対価に見合っているのか」「 薬局は病院の3倍の費用を払うのであれば、それだけの独自性を示してほしい」「調剤後の継続的な電話での相談対応は本当にやっているのか」――などの手厳しい疑問符や要望が国民の代表者から提出された。

存在意義を国民に知ってもらうための責任を果たす
 山村氏は、政策的に医薬分業がうまく機能しているかどうかを全体として評価するために、厚労省はKPIを設定し国民に説明責任を果たそうとしている。我々薬局・薬剤師も公費で生計を賄う以上、国民の疑問符に対して説得できるデータやエビデンスをつくり、説明責任を果たしていく必要があるとした。現状では、薬物療法の安全性・有効性に関するデータは全然足りていない。データづくりの具体例として、疑義照会のデータや併用薬および飲食物に関するデータのほか、お薬手帳の活用状況や継続的な電話相談に関するデータなどを挙げた。「こうした活動をひたすら続けていくことで薬局・薬剤師の存在意義を国民に知ってもらう」とし、薬剤師会などとタッグを組めば取り組みやすいのではないかと展望する。
 また、山村氏は国民医療の質的向上に貢献する取り組みとして、「中間介入研究」を挙げる。例えば、薬経連と明治薬大および日本セラピューティクス学会が合同で取り組んでいる「PIIS(ピース)試験」(長期投薬患者に対する服薬中途段階での電話・来局時・訪問による介入)をはじめ、①「糖尿病患者の透析移行を遅延させる介入」、②「脳梗塞患者の再入院を遅延させる介入」、③「心不全患者の薬・薬連携による介入」などを紹介した。
「PIIS」では、2016年度中間報告で薬剤師の介入によって7割の改善が見られた。①は、薬局外来で糖尿病薬を交付している患者が突然、透析移行にならないように介入することで医療費抑制に貢献する。② は入退院を繰り返している脳梗塞の患者に対して服薬指導や生活支援に力を注ぐことで再入院を遅らせる。③は聖マリアンナ医大薬剤部と川崎市薬剤師会が取り組んでいる薬・薬連携による「心不全患者の再入院防止プログラム」だ。病院での退院時指導を受けて、薬局店頭で薬剤師が体重増加や浮腫などの再入院につながる症状が出ていないかチェックする。こうした中間介入は、「薬剤師の裁量の拡大であると同時に、良い意味での医療費のコストダウンにも貢献するので、薬剤師の評価はいやが上にも高まる」と位置付ける。
 さらに山村氏が早期に実現させたいと構想しているのは、薬局が自前で共有する副作用情報ネットワークだ。全国の薬局の副作用に関するピンポイントデータを集積して“副作用発生の天気予報”を出す。医薬分業の原点というべき安全性の担保の仕組みであり、未知の副作用だけでなく、既知の副作用の発生状況をもカバーする。「薬局が常態的に薬の不利益から患者を守ろうとアクションしているかが問われており、薬の安全性の担保は薬剤師の存在価値の一番の理由」とネットワーク化の必要性の根拠を示した。

「健康寿命の延伸」のためのヘルスケア産業創出に参画
 一方、内閣府の「未来投資戦略」に代表される「健康寿命の延伸」に向けた新しい健康・予防システムの構築の動きに対する薬局の参画を挙げる。「病気になってから治療、介護状態になってから介護」では急伸していく社会保障費の膨らみの抑制は難しい。内閣府や経産省が主導する、最近の技術革新の進展やビッグデータを活用した「健康・予防」の施策(データヘルス)に薬局も関わっていけないかという新しい可能性へのチャレンジであり、公的保険外の事業化を視野に入れた薬局の模索ともいえる。
 現状では、経産省や保険者には薬局や薬剤師会の存在が認識されていないし、健康サポート薬局の動きも話題にさえのぼらない。また、薬局関係者が経産省に健康に関する売り込みに行くわけでもない。「健康に関するプレーヤーとは誰か。地域住民に対して健康教室・運動教室を開催している薬局も少なくないが、それはほとんどワンコインサービスの域を出ていない。薬局の動きはコップの中だけで、空回りしているのではないのか」と危惧する。
 新たな動きとは、今次改定で新設された「オンライン診療」の次の展開となる「オンライン服薬指導」であり、企業の動きが活発化している「健康経営」(「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」の認定・公表)だ。特に後者は、保険者と企業が連携して推進する健康づくりであり、企業ごとの健康度合いを点数で評価する。健保組合員をいかに健康にするかが医療費抑制につながる。「健保の関係者は今、危うくなっているわが国の皆保険制度を守るために必死になっており、それに我々薬局も協力しよう」というスタンスが大切と語る。
 保険者との連携プレーという意味では、山村氏が会長を務める薬経連のシンクタンクである薬事政策研究所が推進している「HORP」(保険者連携プログラム、ホープ)がある。保険組合から健康指導が必要な組合員が利用する薬局リストをもらい、その薬局に健康指導を実施してもらう健康づくり支援事業(1人当たり指導料6,000円)だ。処方箋業務の多忙を理由にして薬局が協力を断るなど課題を抱えているが、薬局には相談・指導を行うための店舗スペースが活用できる強みがあること、さらに検体測定機能を持つ薬局が増えていけば、より力強い強みが発揮でき、薬局の業務拡大の基盤が出来ることになると展望する。薬局が未病・予防の窓口になるためには、新機能の付加・充実が必須であり、薬剤師の裁量拡大の要素を織り込み、質の高い仕事をして国の医療費コストを下げるようなWIN・WINの状況を創出することが重要と強調した。

危機感を軸にファーマシーズ・ビジネスネットワークの構築を
 山村氏が発想転換およびアクションのキーワードとして挙げるのは、① 従来型の発想の延長線上に未来はないと考えること(過去データに基づく将来設計をやめること)、② 新たな薬局形態をつくっていくためには「変革のための破壊」(Disruption)を行って野心ある行動をとっていくこと、③ AIの進化を怒れるのではなく、積極的な活用により業務の自動化・省力化を図り、その余力で顧客サービスの充実に当てること、④ 薬局が連携し1つのパワーとして精度を出すこと(薬局個々にできることには限界があり、連携することで活路を見出す)、⑤薬局業界にはガリバー型の大手企業は存在せず、今からでもできることがあると野心を持つこと、⑥医療費40兆円が60兆円に増大するが、この20兆円増をヘルスケア産業のマーケットができるととらえること――等々。
 山村氏は、「無謀に思うかもしれないが、誰かが言わないと動かない、誰かが動かないと変わらない。「黒船」=アマゾンが到来し、薬局業界は危機感を軸に立ち向かっていく感覚が必要。薬局の新しいネットワーク、ファーマシーズ・ビジネスネットワークの構築に一緒に動きませんか。今はイノベーターが主導権をにぎって業界を変える時代。イノベーターとは私たちだ」とアピールした。

一般社団法人次世代薬局研究会2025
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