コラム・上田訪問で感じたリーダーシップ

上田訪問で感じたリーダーシップ
一般社団法人 次世代薬局研究会2025 代表理事・藤田道男

社会には大小様々な目的のもとに集まる集合体があります。それらの組織を維持・発展させていくための要素は様々なものがありますが、その中に重要な役割を果たすのがリーダーの存在です。組織には国際機関や国家など大掛かりなものから、町内会や学校のクラスなど身近な組織があります。リーダーのあり様が、組織を強固なものにし、時に弱体化させることになります。航海中に船長が目的地をはっきりと示し、指示しなければ船は海原を漂う羽目に陥ります。

目標設定とそこに至る道筋を示す
薬局・薬剤師の世界にも様々な組織がそれぞれの目標を掲げて存在しています。我々が結集している「一般社団法人 次世代薬局研究会2025」もその組織のひとつです。
9月29日、次世代薬局研究会の視察セミナーの一環として長野県上田薬剤師会、会員薬局を訪問しました。視察セミナーの内容は近々に報告する予定なのでそちらを楽しみにしていただきたいと思いますが、本稿では上田薬剤師会会長の飯島康典氏との懇談を通じて感じたリーダーシップの在り方について触れます。
リーダーがリーダーたる手腕を発揮し、構成員がそれに付いていくためには何が必要なのでしょうか。リーダーシップ論については、様々な解説が出されていますが、それはそれとして、本稿では上田訪問で感じた個人的見解です。
リーダーシップでもっとも重要なことは「目標を設定すること」、次に「そのための環境整備を行うこと」と考えます。近未来のあるべき姿を提示し、そこに至る道筋を示すことです。
薬剤師会の目標は薬剤師法第1条にある「国民の健康な生活を確保する」ために会員をバックアップすることであり、極論すれば、構成員たる薬局が「24時間、365日、国民が必要な時に必要な医薬品を供給する」ことができるよう組織的にバックアップすることと言えます。
薬局業界が抱える当面の課題は、地域包括ケアシステムの中でいかに薬局・薬剤師が貢献できる体制を整備するかにあることは論を待ちません。
上田薬剤師会が独自に制定している「認定基準薬局制度」は保険調剤、薬局の体制整備、地域貢献などの各要件で70%以上を取得しなければ認定されません。日本薬剤師会がかつて制定していた基準薬局制度に比べ格段に厳しい内容となっていますが、上田薬剤師会ではこうした薬局の姿を提示し、それを各薬局が実行するために薬剤師会がサポートする体制を作っています。
また上田薬剤師会が独自に策定している「薬局における品質管理マニュアル」「調剤室・調剤業務等の品質保証ガイドライン」も衛生管理、医薬品の品質管理上重要な指針となっており、これらが上田地区の薬局のレベルアップにつながっていることは間違いありません。
スウェーデン、デンマークなど欧州の薬局・薬事制度の研修、オーストラリア薬剤師会との交流なども先を見据えた薬局像を追求する一環と受け止めました。調剤報酬は先細りであり、調剤報酬体系自体も様変わりする可能性があります。極端に言えば、「医薬品代+マージン」といった報酬体系に変わる可能性も否定できません。上田薬剤師会は、そうした状況を踏まえ、世界の動向を見据えながら地域密着の薬局像をどう構築するかという課題を追求していると言えます。
飯島会長は「薬剤師会としてあるべき薬局像を目指すうえで70%の体制整備を行う。残り30%は自助努力」と語っていますが、まさに上田ではそれを実践していることを実感しました。

あらゆる情報は公開する
さらにリーダーシップの要件で重要なことは、情報公開です。飯島氏は毎日、早朝に膨大な医療・医薬品関係情報を会員に提供しています。アスリート団体の不祥事で明るみになったように、権力を固めるために、できるだけ情報を他に出さず、独り占めするようなリーダーが往々にして存在しますが、すべて公開することで全体のレベルアップを促す姿勢には好感が持てます。情報を活用するかしないかは個人の判断ですが、常に開かれた体制を作っているのです。
率先垂範の姿を示すことも重要です。言い換えれば「背中で語る」ことです。詳細は上田訪問のレポートを見ていただきたいと思いますが、薬局の構造設備、清潔度、患者や生活者に対する薬剤師の接遇は他の模範となるにふさわしい内容だったことは断言できます。
上田地区は、分業元年以前から処方箋調剤を行い、地域密着型の薬局像を追究してきました。脈々と受け継いできた伝統のもと、薬局・薬剤師の大義ともいうべき、地域密着の旗を掲げ、変わりゆく時勢にも対応する先取の精神を持ち、先頭に立ってリードする。それがまさにリーダーシップであることを痛感した上田訪問でした。
翻って、我が一般社団法人 次世代薬局研究会2025も設立以来9年目に突入しました。次世代研究会は「薬局・薬剤師の意識改革と行動変容」を訴えていますが、まず我々自身も意識を変え、行動変容する覚悟を固めています。皆様と共に明日の薬局・薬剤師像を追究していきましょう。                               (2018.10.1)