コラム・「対人業務」へのシフトは待ったなし

「対人業務」へのシフトは待ったなし
一般社団法人 次世代薬局研究会2025 代表理事・藤田道男

薬剤師業務の基本的役割は何か
「対物業務」から「対人業務」へのシフト―。2025年の構築を目指す地域包括ケアシステムにおける薬局・薬剤師の対応を考えるうえで、対人業務へのシフトは薬局・薬剤師の焦眉の課題ということができる。
厚生科学審議会・医薬品医療機器制度部会で行われている医薬品医療機器等法(薬機法)の改正議論でも対人業務へのシフトが焦点の一つとなっている。薬機法改正における薬局・薬剤師の在り方に関しては、内容がほぼ固まった。改正案は来年の通常国会に提出することが決まっており、12月中、遅くとも1月には部会としての報告書が取りまとめられる。
薬局・薬剤師の在り方に関しては、薬局の機能分類、薬剤交付後のフォロー、ガバナンスの強化、オンライン服薬指導が焦点になっている。
いずれも今後の薬局運営に大きく影響する内容だが、筆者としては「薬剤師による情報提供および薬学的知見に基づく指導の強化」に注目したい。なぜならば、このテーマこそが対人業務の象徴であり、薬剤師の調剤業務の本質や医薬分業の在り方に照らして最も重要、かつ基本的事項と考えるからである。

投薬期間中のフォロー
薬学的知見に基づく指導の文言には「服薬期間中」とある。これまでのように、「処方箋受付」→「調剤」→「薬剤を交付して終了」とはならず、「薬剤交付後のフォロー」までが義務化される方向にある。
すなわち薬剤師の日常業務の在り方が大きく変わる可能性がある。フォローすべき対象、その方法、問い合わせへの対応、マンパワー等々、検討すべき事項は山積しており、開設者、薬剤師が一丸となって、今からその対応に備えることが望まれる。

対人業務重視の布石はあった
対物業務から対人業務へのシフトに関しては、厚労省が2015年に示した「患者のための薬局ビジョン」や16年度調剤報酬改定から新設された「かかりつけ薬剤師指導料」で鮮明に打ち出された。
ただし、対人業務を重視する方向は、最近になって登場したわけではなく、これまでにも布石は打たれていた。
調剤報酬の変遷を見ると、それまで調剤基本料、調剤料、加算、薬剤料の構成だった調剤報酬体系に1983年になって初めて特掲技術料が新設された。これは1996年に指導管理料となり、2004年からは薬学管理料となって、現在に引き継がれている。また薬剤服用歴管理指導料は1986年に新設された。
これらは医薬品の取り揃え、調製を中心とした対物業務ではなく、対人業務を評価するための点数であることは明らかだ。

調剤指針と改正薬剤師法の対人業務
また、より鮮明に対人業務へのシフトを打ち出したのが2011年の13改訂調剤指針と2014年施行の改正薬剤師法である。
2011年改定の「調剤指針」(日本薬剤師会編)には調剤の概念について次のように記載されている。

 ●第13改訂調剤指針(2011年)
調剤の概念とは、薬剤師が専門性を活かして、診断に基づいて指示された薬物療法を患者に対して個別最適化を行い実施することをいう。また、患者に薬剤を交付した後も、その後の経過の観察や結果の確認を行い、薬物療法の評価と問題を把握し、医師や患者にその内容を伝達することまでを含む。

また2014年施行の改正薬剤師法第25条の2では、従来の「薬剤師の情報提供義務」に加え、「薬学的知見に基づく指導」が加わった。

 ●薬剤師法第25条の2
薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たっているものに対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。

上記の記載内容は、薬剤師の行う調剤業務が「対人業務」にあることを鮮明にした点で特徴的である。
ただ、調剤指針に明記されている「投薬後のフォロー」に関して、薬剤師法では明確になっていない。今回の薬機法改正議論の結果、これが法文に記載されることになれば、画期的な改正ということになる。
対物業務に比べ、対人業務は記録が残りにくい。対物業務であればモノ自体がそれを証明してくれるが、対人業務では、「いつ」「誰に対して」「どのような」指導を行ったかを記録することが重要だ。薬機法改正議論でも「調剤録への記載」が義務化される方向であることも肝に銘じておきたい。

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